GOOD LOCAL PEOPLE高木 市之助|Clips
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GOOD LOCAL PEOPLE
高木 市之助

GOOD LOCAL PEOPLE 
高木 市之助

2024.12.28

イオンモールいわき小名浜のリニューアルのキービジュアルデザインを制作された高木市之助さん。
地元いわきに対する思いやキービジュアルデザインのコンセプトについて、お話を伺いました。

これからの世代にも、
いわきを大切に思ってもらえるように
いわき市で生まれ育ち、地域に根ざしたデザイナーとして活躍してきた高木氏。小名浜の町を題材としたアート企画を行うなど、地域社会と積極的に関わり合いながらデザイン活動を行ってきた。
「デザインの仕事はご依頼があって成立するものですが、クライアントの利益を追求するだけでなく、その仕事が形になることで、誰かのハッピーに繋がる、そんな社会的意義がある仕事をしたいと思っています」と語る。
 
高木氏がそう考えるようになったきっかけは、地域に暮らす人々との出会いだ。
「私の仕事は地域の企業や団体からの依頼がほとんどです。そこで働く人たちは皆さん、仕事を通じて社会課題解決に貢献している。例えば漁業の復興であったり、森林資源や地元の技術者を守っていたり、昔から続く家業を守っていたり、といったことですね。そういった地元の皆さんの志が、地域の未来をつくっていくのだと感じています」
これからの世代にも、地域を大切に思ってもらいたい。高木氏のデザインには、そうした思いが宿っている。

かまぼこ会社で職人の傍ら、
デザイン制作に取り組む
高木氏は仙台のデザイン学校に通った後、東京に夢を抱いて上京。印刷所のデザイナーからはじまり、様々な仕事に就いた。しかし30歳を機に「地元で働きたい」という思いが強まり、いわき市へと戻ってくる。地域に根ざしたデザイナーとしての活動は、いわきのかまぼこ製造会社 貴千に入社したことから始まった。
「当初はデザイナーでなく、製造職として採用されました。しかし入社翌年に、東日本大震災が起きたんですね。一時期は工場も津波で壊れてしまい、かまぼこを作れない状態になりました。そんな中でも、『地域色のある商品を開発して、他のかまぼこと差別化していこう』という機運が社内にありました」
震災の年の冬、初めて貴千からリリースされた新製品が、小名浜の郷土料理をモチーフにした「さんまのぽーぽー焼き風かまぼこ」。そのパッケージデザインを、グラフィックデザインの経験があった高木氏が担当することになる。
「被災地域からの明るいニュースとして多くのメディアが採り上げてくれました。その流れから、貴千のかまぼこをより多くの人に、若い世代の人にも知ってもらうためにデザインにも力を入れていこう、という話になり、専務と相談して新たに企画開発室を設置。その室長になりました」
独立し、自身のデザイン事務所を立ち上げた今も、デザインを通して地域に貢献する姿勢は変わっていない。

【右】キービジュアルデザインは、いわきの特徴をモチーフとした柄となっている。いわき踊り、フラダンス、サッカー(いわきFC)、花火(いわき花火大会)、塩屋崎灯台がモチーフに。
【左】ティザーのラクダのイラスト。オアシスとなる新しいイオンモールにみんなを連れていくというシチュエーションで、ラクダのキャラバン隊を描いた。

多様な人が集う
オアシスとなるように

―今回、イオンモールいわき小名浜のリニューアルのキービジュアルデザイン制作を引き受けることにした理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?

事前にゼネラルマネージャーの進藤さんから説明いただいた、イオンモールいわき小名浜のビジョンに共感できたからです。リニューアルのコンセプトである「リゾートモール」は、人々が集まるオアシスのような場所を目指したもの、ということを聞かせていただき、私の中で腑に落ちました。進藤さんをはじめとする担当者の皆さんからも「地域に愛されるイオンモールでありたい」という、強い思いを感じました。

―リニューアルのキービジュアルデザインのコンセプトを教えてください。

リニューアルのコンセプトが「リゾートモール」ということだったので、いわき市のフラと合わせ、その土地の特徴をモチーフとした「柄(パターン)」のアイデアを考えました。いわき市には多様な特徴や文化があるので、それらが集結したパターンを描くことで、オアシスのように県内外から人が集まる場になって欲しいというメッセージを込めました。ティザーでは、リニューアルのわくわくを運んでくるキャラバン隊という設定で、ラクダのイラストを描きました。

―高木さんはデザイン制作について、「デザインはコミュニケーションの懸け橋」と考えているということですが、そういった考えに至った経緯を教えていただけますか?

クライアントが伝えたいメッセージをどう形にしていくのかがデザインだと思っています。デザイナーが自分勝手に作るのではなく、クライアントが抱いている思いや、目指している将来像をくみとり、それを元に表現を作っていくことが私の仕事。今回の場合で言うと、イオンモールいわき小名浜のリニューアルコンセプトである「リゾートモール」を代弁するようなグラフィックにしたつもりです。

―高木さんの今後の活動において、地元の方とどのようにして関わっていきたいと、考えていらっしゃいますか?

デザインはクライアントとデザイナーの共同創作物だと私は考えています。なので、新しいモノやコトを産み出したいという思いを持った方と二人三脚で、共創できる存在でありたいと思います。私は普段から自身で表現したいものがあるというより、クライアントから相談されたときにアイデアが沸いてくるタイプ。地元の身近なデザイナーとして気軽に声をかけてもらえると嬉しいですね。

2024年の春に、いわき市折戸の海の目の前にある2階建ての古民家の2階部分に、事務所を移転。友人と共同で古民家を借りて、DIYで改修。1階はPRの仕事をしている友人の事務所とショップ、2階を高木デザイン事務所として開設した。

高木 市之助

仙台デザイン専門学校グラフィックデザイン科卒業。かまぼこ製造会社 貴千にて企画開発室長として従事。商品のパッケージ、ウェブサイト、販促物などのデザインに携わる。2016年、 デザイン事務所 Takagi Ichinosuke Graphic & Design を設立。2019年に自身がデザインを手掛けた「いわきの地域包括ケアigoku」が、グッドデザイン賞ファイナリスト金賞を受賞。日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA) 会員。いわき市在住。

撮影:小堀 裕介/テキスト:田端 邦彦

 

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